「相続財産の確保」とは、講学上の相続財産の管理のことである。
マイナンバー時代には、タンス預金が増えているのである。そのタンス預金は現金そのものであるが故に、事実上の早い者勝ちになる事があるからである。
よって、時間との勝負であって、いち早く専門家に依頼したほうが勝ち組になるであろう。ここでの重要ポイントは以下の通りである。
1.相続財産の管理と取戻し
(1)相続財産の管理
①共同相続人による共同管理
(相続財産の管理)
第九百十八条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
「単純承認してから遺産分割までの相続財産の管理の仕方」
⇒物権法の規定に従う
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
(相続財産に関する費用)
第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2 前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。
◆共同相続の場合、相続人の一人が単独所有権取得の登記をなし、これを第三者に譲渡し、所有権移転の登記をしても、他の相続人は自己の持分を登記なくして、これに対抗できる。(最判昭38・2・22)
◆時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができると解すべきであるから、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎない。(最判平13・7・10)
②相続財産管理人による管理
委任により、共同相続人が財産管理人を依頼し、その者が財産管理することも可能である。
遺言があれば、遺言執行人が決まっていればその者がその役をする(1012条)。
遺産分割の申し立てがあれば、遺産管理を家裁が選出する場合もある(家事事件手続法200条)。
③相続財産の占有
・取得時効
共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租・公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人が何ら関心をもたず、異議も述べなかった等の事情の下においては、前記相続人はその相続の時から相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。(最判昭47・9・8)
・明渡請求
自己の持分を超えて単独で共有不動産を占有する共有者に対し、他の共有者は当然には共有不動産の明渡しを請求することはできないが、その持分割合に応じて、占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払いを請求することができる。(最判平12・4・7判時1713-50)
・使用収益による利得の返還
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認され、相続開始後の建物使用により当該相続人が得る利益に法律上の原因がないということはできないから、他の共同相続人による当該相続人に対する不当利得の返還請求には理由がない。共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物に被相続人と同居してきた場合は、特段の事情のない限り、被相続人死亡時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人を貸主、同居相続人を借主とする建物の使用貸借契約が存続する。(最判平8・12・17)
・果実
相続開始から遺産分割までの間に遺産である不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は後にされた遺産分割の影響を受けない。(最判平17・9・8民集59-7-1931)
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