第五編 相続
第一章 総則
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
1.人の死
相続実務をしていると、家督相続の戸籍謄本によく接する。私の父の相続でも、出生時の戸籍謄本は旧民法の戸主の下で生まれていた記載があった。それを否定する含意がこの条文には有る。死亡概念は刑法の臓器移植で大変問題になったが、民事では事件発生は寡聞にして知らない。1997年に臓器移植法が成立したが、心肺の不可逆停止ではなくて、脳死が人の死なのかという論点は依然としてあろう。相続法では後に述べるように胎児の出生擬制があるので、論点も限られよう。災害や事故での同時死亡の推定では問題になり得る。
2.認定死亡と失踪宣告による死の擬制
(1)戸籍法第八九条 【事変による死亡の報告】
水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
◆コメント:この条文はさらりと書いてあるが、死亡の確認がなくても死亡が確実視されるから死んだことにするのである。生存証拠があれば死亡でなくなる。
(2)民法第三〇条(失踪の宣告)
不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
第三一条(失踪の宣告の効力)
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
第三二条(失踪の宣告の取消し)
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
◆コメント:ここでは、家庭裁判所が関わっているやや重たい制度になっている。7年が短のか長いのか。過日の相続おもいやり相談室の無料相談会では10年不明の方の姉が来た。かなり悲惨な事情で姿を消して10年であった。失踪宣告もない遺産分割であった。その後家裁に行くと言っていたが不明。
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