1.相続時精算課税制度の概要

(1)適用対象者

従来は、贈与者は、満65歳以上の親、受贈者は、満20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)で…人数の制限はない(これも誤解の多い点です)。となっていたが、

※2019年からはさらに対象者を拡充して、

贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母

受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫

とされた。

さらに、民法の成人年齢改正により、令和4年度からは18歳以上であれば受贈者の資格がある。

(2)適用手続

○贈与を受けた年の翌年3月15日までに税務署へ本制度を選択する旨を届出

○本制度の選択を一度届け出れば、以後同じ贈与者からの贈与について相続時まで本制度の適用が継続

つまり、相続時精算課税制度を選ぶと暦年贈与は併用できない。しかし、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度は相続時精算課税制度と併用可能である(18歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるため、父母や祖父母等から一定の贈与を受けた場合、1000万円までの贈与税が非課税)。

○受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父、母ごとに、選択可能

(3)適用対象となる贈与財産等

○贈与財産の種類、贈与金額、贈与回数に制限はない。

(4)税額の計算等

(贈与時)

・制度の対象となる親からの贈与財産について、他の贈与財産と区別して、贈与時に贈与税(軽減)を納税

・申告を前提に、2,500万円の非課税枠(限度額まで複数回使用可)、これを超える部分については税率20%で課税。

・住宅取得等資金の贈与の場合については、贈与者年齢要件(65歳以上)を撤廃するとともに、非課税枠を 拡大(1,000万円の上乗せ)。(適用期間:平成15年?平成19年)

・特定同族株式等の贈与の場合については、贈与者年齢要件(65歳以上)を60歳に引き下げるとともに、 非課税枠を拡大(500万円の上乗せ)。(適用期間:平成19年?平成21年)

(相続時)

・選択した子は、制度の対象となる親からの相続時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して計算した相続税額(計算方法は従来と同じ)から、既に支払った贈与税相当額を控除

・相続税額から控除しきれない贈与税相当額は還付

・相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価

2.令和5年度の相続税法改正(財務省)

 相続時精算課税制度について、現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除を創設するとともに、相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合に相続時にその課税価格を再計算する見直しを行う。

 

3.相続税法の規定(相続税法 第2章 課税価格等 第三節 相続時精算課税)

(相続時精算課税の選択)
第二一条の九 
① 贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年一月一日において十八歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において六十歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、この節の規定の適用を受けることができる。

② 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第二十八条第一項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

③ 前項の届出書に係る贈与をした者からの贈与により取得する財産については、当該届出書に係る年分以後、前節及びこの節の規定により、贈与税額を計算する。

④ その年一月一日において十八歳以上の者が同日において六十歳以上の者からの贈与により財産を取得した場合にその年の中途においてその者の養子となつたことその他の事由によりその者の推定相続人となつたとき(配偶者となつたときを除く。)には、推定相続人となつた時前にその者からの贈与により取得した財産については、第一項の規定の適用はないものとする。

⑤ 第二項の届出書を提出した者(以下「相続時精算課税適用者」という。)が、その届出書に係る第一項の贈与をした者(以下「特定贈与者」という。)の推定相続人でなくなつた場合においても、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産については、第三項の規定の適用があるものとする。

⑥ 相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない。

(相続時精算課税に係る贈与税の課税価格)
第二一条の一〇 
相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額を合計し、それぞれの合計額をもつて、贈与税の課税価格とする。

(適用除外)
第二一条の一一 
相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、第二十一条の五から第二十一条の七までの規定は、適用しない。

(相続時精算課税に係る贈与税の特別控除)
第二一条の一二 
① 相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除する。
一 二千五百万円(既にこの条の規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)

二 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格

② 前項の規定は、期限内申告書に同項の規定により控除を受ける金額、既に同項の規定の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り、適用する。

③ 税務署長は、第一項の財産について前項の記載がない期限内申告書の提出があつた場合において、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

(相続時精算課税に係る贈与税の税率)
第二一条の一三 
相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税の額は、特定贈与者ごとに、第二十一条の十の規定により計算された贈与税の課税価格(前条第一項の規定の適用がある場合には、同項の規定による控除後の金額)にそれぞれ百分の二十の税率を乗じて計算した金額とする。

(相続時精算課税に係る相続税額)
第二一条の一四 
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者の相続税の計算についての第十五条の規定の適用については、同条第一項中「(第十九条」とあるのは「(第十九条、第二十一条の十五又は第二十一条の十六」と、「同条」とあるのは「これら」とする。

第二一条の一五 
① 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるもの(第二十一条の二第一項から第三項まで、第二十一条の三、第二十一条の四及び第二十一条の十の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額をもつて、相続税の課税価格とする。

② 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者及び他の者に係る相続税の計算についての第十三条、第十八条、第十九条、第十九条の三及び第二十条の規定の適用については、第十三条第一項中「取得した財産」とあるのは「取得した財産及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産」と、同条第二項中「あるもの」とあるのは「あるもの及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産」と、同条第四項中「取得した財産」とあるのは「取得した財産及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産」と、第十八条第一項中「とする」とあるのは「とする。ただし、贈与により財産を取得した時において当該被相続人の当該一親等の血族であつた場合には、当該被相続人から取得した当該財産に対応する相続税額として政令で定めるものについては、この限りでない」と、第十九条第一項中「特定贈与財産」とあるのは「特定贈与財産及び第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産」と、第十九条の三第三項中「財産」とあるのは「財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。)」と、第二十条第一号中「事由により取得した財産」とあるのは「事由により取得した財産(当該被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。)」と、同条第二号中「財産の価額」とあるのは「財産(当該被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。)の価額」とする。

③ 第一項の場合において、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(第二十一条の八の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。

第二一条の一六 
① 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第一節の規定を適用する。

② 前項の場合において、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税の計算についての第十八条、第十九条、第十九条の三及び第十九条の四の規定の適用については、第十八条第一項中「とする」とあるのは「とする。ただし、贈与により財産を取得した時において当該被相続人の当該一親等の血族であつた場合には、当該被相続人から取得した当該財産に対応する相続税額として政令で定めるものについては、この限りでない」と、第十九条第一項中「特定贈与財産」とあるのは「特定贈与財産及び第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産」と、第十九条の三第三項中「財産」とあるのは「財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。)」と、第十九条の四第一項中「該当する者」とあるのは「該当する者及び同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)」とする。

③ 第一項の規定により特定贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税価格に算入される財産の価額は、同項の贈与の時における価額による。

④ 第一項の場合において、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(第二十一条の八の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。

(相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等)
第二一条の一七 
① 特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、当該相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。以下この条及び次条において同じ。)は、当該相続時精算課税適用者が有していたこの節の規定の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。ただし、当該相続人のうちに当該特定贈与者がある場合には、当該特定贈与者は、当該納税に係る権利又は義務については、これを承継しない。

② 前項本文の場合において、相続時精算課税適用者の相続人が限定承認をしたときは、当該相続人は、相続により取得した財産(当該相続時精算課税適用者からの遺贈又は贈与により取得した財産を含む。)の限度においてのみ同項の納税に係る権利又は義務を承継する。

③ 国税通則法第五条第二項及び第三項(相続による国税の納付義務の承継)の規定は、この条の規定により相続時精算課税適用者の相続人が有することとなる第一項の納税に係る権利又は義務について、準用する。

④ 前三項の規定は、第一項の権利又は義務を承継した者が死亡した場合について、準用する。

第二一条の一八 
① 贈与により財産を取得した者(以下この条において「被相続人」という。)が第二十一条の九第一項の規定の適用を受けることができる場合に、当該被相続人が同条第二項の規定による同項の届出書の提出期限前に当該届出書を提出しないで死亡したときは、当該被相続人の相続人(当該贈与をした者を除く。以下この条において同じ。)は、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(相続人が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に、政令で定めるところにより、当該届出書を当該被相続人の納税地の所轄税務署長に共同して提出することができる。

② 前項の規定により第二十一条の九第二項の届出書を提出した相続人は、被相続人が有することとなる同条第一項の規定の適用を受けることに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。この場合において、前条第二項及び第三項の規定を準用する。

③ 第一項の規定により第二十一条の九第二項の届出書を提出することができる被相続人の相続人が当該届出書を提出しないで死亡した場合には、前二項の規定を準用する。

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