1.オンラインで財産管理する時代の相続財産の調査の難しさ
デジタル時代において、スマホで財産管理が可能になり、相続財産の調査が一般の書類では難しくなり、これに従来からの被相続人の不動産資産の把握の困難さが改善されず、親族関係を含めた「1億総孤独時代」がそれに拍車をかけている。亡くなった方がどんな資産を持っていたのか、相続おもいやり相談室を運営する実務家の当職でさえも途方に暮れることがある。
例えば、オンラインで財産管理をする時代では、金融機関、メガバンクも熱心であるが「スマホだけ、数分間で口座を持てますよ」などのキャッチ コピー、スマホ1台で財産管理できるなんてなこと言ってるが、いざそれを家族も含めて第三者が把握することが必要になる事は視野にないのではないか。スマホはいっぱいのパスワードが かかっている。情報セキュリティの観点は大切であるが、他の考慮も必要であろう。届けている金融機関にカネを引き寄せようとしているのか。あまり感心しないな。
2.不動産調査の難点
不動産調査では、名寄帳が被相続人の不動産所有状況の把握には最も重要だが、非課税物件では出てこずしかも過去数年に情報が制限されている点が難点であり、個人名で検索一切できないなど法務局の検索制度の不十分さも指摘されている。
3.金融資産の調査方法
金融資産については、本人の生活の場を訪れて、通帳やキャッシュカードなどを確認することが重要であり、郵送物やノベルティも手がかりとして活用されている。生命保険等は民法と相続税法で扱いが異なることもあって、うっかり把握しないこともあろうが、善管注意義務違反にならないように実務家は受任者の立場から慎重に生命保険協会に問い合わせをすべきであろう。ただし支払い済みや農協と共催は除かれるが。
4.ネット時代の課題
オンラインで財産を持つ時代において、スマートフォンやオンラインアカウントの多重なパスワード保護が相続の調査を難しくしており、開示請求の困難さなどの個人情報保護法やプライバシーの問題も存在する。特にこの関連で厄介なのは、株式と暗号資産である。前者は、ネット証券会社も含めてわかる「ほふり」証券保管振替機構があるが後者は海外の企業時は相続税のみ掛かって財産は承継できないという悲惨な結果が起こる可能性がある。相続放棄は一括のみの民法相続編の規定が泣き寝入りの原因になろう。国内の暗号資産運営会社はそういうことはない。
5.マイナンバー制度の活用
一括調査の観点からは、一定以上の資産家が年に1回税務署に届け出ている「資産債務調査」があるが、令和6年度からはマイナンバー制度がに活用され、将来的にはマイナンバーカードの紐付けによって一括して調査できるようになる見込みであり、これが調査の効率化に寄与することが期待されている。
※財産目録付きの遺言の重要性が一層高まってきている昨今である。
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