1.実家の整理にいい方法はあるのでしょうか。
ご存知のように、総務省統計局によれば、2018年の住宅・土地統計調査の結果、空き家数は848万9千戸と過去最多となり、全国の住宅の13.6%を占めています。最も高いのは、山梨県の21.3%です。過疎地が多く、平成合併で地方にさらに加速して人が住みにくくなってきたのです。
実家を相続すれば、空き家でも「固定資産税及び都市計画税」は支払義務があります。
また、災害時等に他の家や住民に迷惑がかかるリスクもあります。
しかも、2014年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特別措置法)」が制定され、環境悪化など一定の要件に当てはまると住宅用地の特例の対象外となり、空き地並みの固定資産税になる特定空家に認定される可能性があります。税負担は6倍です。
さらに、空き家の原因が登記怠慢にもあることから、次のように令和6年4月から相続登記の申請が義務化されます。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
相続放棄が絡むこの難しい問題に、従来から相続おもいやり相談室では、下記の動画にもあるような方針で取り組んでいます。
なお、あっさりと解体する方法もありますが、家の状態や地域にもよりますが、平均してざっくり200万円ほど解体費用がかかり、上述のようにお金を使って解体しても、住宅が建っていない土地では固定資産税の特例がなくなります。
2.空き家の解決に関する法的な手段(youtube動作参照)
(1)相続放棄
(2)生前贈与を出来ないか
(3)共有関係の持ち分放棄は可能か
(4)不動産の所有権放棄は可能か
(2)補充(特別法「国家帰属制度」、3000万円控除制度)
1)不動産放棄に関する新法について
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。
第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続
(承認申請)
第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
(承認申請書等)
第三条 承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した承認申請書及び法務省令で定める添付書類を法務大臣に提出しなければならない。
一 承認申請者の氏名又は名称及び住所
二 承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積
2 承認申請者は、法務省令で定めるところにより、物価の状況、承認申請に対する審査に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
(承認申請の却下)
第四条 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。
一 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき。
二 承認申請が第二条第三項又は前条の規定に違反するとき。
三 承認申請者が、正当な理由がないのに、第六条の規定による調査に応じないとき。
2 法務大臣は、前項の規定により承認申請を却下したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。
(承認)
第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。
(事実の調査)
第六条 法務大臣は、承認申請に係る審査のため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。
2 前項の規定により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。
3 法務大臣は、その職員が前項の規定により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。
4 法務大臣は、前項の規定によりその職員を他人の土地に立ち入らせるときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。
5 第三項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする職員は、その立入りの際、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
6 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
7 第三項の規定による立入りをする場合には、職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
8 国は、第三項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(資料の提供要求等)
第七条 法務大臣は、前条第一項の事実の調査のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。
(承認に関する意見聴取)
第八条 法務大臣は、第五条第一項の承認をするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、承認申請に係る土地が主に農用地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)又は森林(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林をいう。以下同じ。)として利用されている土地ではないと明らかに認められるときは、この限りでない。
(承認の通知等)
第九条 法務大臣は、第五条第一項の承認をし、又はしないこととしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。
(負担金の納付)
第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。
2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。
3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。
(国庫帰属の時期)
第十一条 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、第五条第一項の承認に係る土地の所有権は、国庫に帰属する。
2 法務大臣は、第五条第一項の承認に係る土地の所有権が前項の規定により国庫に帰属したときは、直ちに、その旨を財務大臣(当該土地が主に農用地又は森林として利用されていると認められるときは、農林水産大臣)に通知しなければならない。
第三章 国庫帰属地の管理
(土地の管理の機関)
第十二条 前条第一項の規定により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)のうち、主に農用地又は森林として利用されている土地(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第四条第二項に規定する国有財産の所管換がされたもの又は他の法令の規定により農林水産大臣が管理することとされているものを除く。)は、農林水産大臣が管理し、又は処分する。
2 前項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に農用地として利用されているものの管理及び処分については、農地法第四十五条、第四十六条第一項、第四十七条及び第四十九条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、「この法律による買収その他の処分」とあるのは「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第十二条第二項において準用する第四十六条第一項の規定による売払い又は同法第十二条第二項において準用する第四十七条の規定による売払い、所管換若しくは所属替」と、同条第三項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、同条第五項中「国又は都道府県等」とあるのは「国」と、「場合には、政令で定めるところにより」とあるのは「場合には」と読み替えるものとする。
3 前項において準用する農地法第四十六条第一項又は第四十七条の規定による農用地の売払いを原因とする所有権の移転については、同法第三条第一項本文の規定は、適用しない。
4 第一項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に森林として利用されているものの管理及び処分については、国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二章(第七条を除く。)の規定を準用する。
第四章 雑則
(承認の取消し等)
第十三条 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により第五条第一項の承認を受けたことが判明したときは、同項の承認を取り消すことができる。
2 法務大臣は、国庫帰属地について前項の規定による承認の取消しをするときは、あらかじめ、当該国庫帰属地を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与(以下この項及び次項において「交換等」という。)により国有財産(国有財産法第二条第一項に規定する国有財産をいう。次項において同じ。)でなくなっているときは、当該交換等の処分をした各省各庁の長)の意見を聴くものとする。
3 法務大臣は、第一項の規定による承認の取消しをしようとする場合において、当該取消しに係る国庫帰属地(交換等により国有財産でなくなっている土地を含む。以下この項において同じ。)の所有権を取得した者又は当該国庫帰属地につき所有権以外の権利の設定を受けた者があるときは、これらの者の同意を得なければならない。
4 法務大臣は、第一項の規定により第五条第一項の承認を取り消したときは、法務省令で定めるところにより、その旨を同項の承認を受けた者に通知するものとする。
(損害賠償責任)
第十四条 第五条第一項の承認に係る土地について当該承認の時において第二条第三項各号又は第五条第一項各号のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において、当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに同項の承認を受けた者であるときは、その者は、国に対してその損害を賠償する責任を負うものとする。
(権限の委任)
第十五条 この法律に規定する法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。
2 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その全部又は一部を地方農政局長又は森林管理局長に委任することができる。
3 前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。
(政令への委任)
第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項については、政令で定める。
第五章 罰則
第十七条 第十二条第二項において読み替えて準用する農地法第四十九条第一項の規定による職員の調査、測量、除去又は移転を拒み、妨げ、又は忌避したときは、その違反行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。
附 則
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html この制度に関する詳細な法務省の説明があるので参照されたい
2)被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。つまり、所得税法33条、租税特別措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》関係等により、空き家不動産譲渡所得から3000万円までの控除が可能である。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm 国税庁の詳細な説明があるので参照されたい。
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