贈与による相続税の生前対策としての贈与契約は、なんでこんなに誤解が多いのであろうか。
・暦年贈与も分割贈与と思い込んでいる人、
・一人にしか110万の枠がないと思い込んでいる人、
・海外の国のように税を払うのは自分と思い込んでいる人、
・名義預金も贈与と思い込んでいる人、
・住宅資金・教育資金などの特例措置をよく知らない人、
・相続時精算課税制度は贈与税の後払い特例と分かっていない人、
・贈与は民法の適用される典型契約で単独行為でないと全く知らない人
・かなりヒドイのが、名義変えるだけであれば、不動産も預貯金通帳も、贈与でも何でもないと思い込んでいる人
など枚挙にいとまがない。以下に順次ポイントを述べる。
1.贈与契約
贈与税は個人から贈与を受けた個人に対して課される。
法人から個人が受けても一時所得等の所得税の対象になる。
また法人が受贈者であれば法人税の対象である。
①贈与契約とは、自己(贈与者)の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方(受贈者)がそれを受諾することによって成り立つ片務契約・諾成契約である。
②書面によらない贈与は、履行前であればいつでも取り消すことができるが、原則として履行後に取り消すことはできない。書面による贈与は、履行前後を問わず、原則として取り消すことはできない。
③贈与者は、贈与の目的物に瑕疵があることを知らなかった場合には、受贈者に対しその瑕疵についての担保責任を負わない(負担付贈与を除く)。
④夫婦問で締結した贈与契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方から取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2.贈与の種類
定期贈与、負根付贈与および死因贈与をまとめて「特殊の贈与」と称する場合があり、「特殊の贈与」以外の通常の贈与は単純贈与と称される。
(1)定期贈与:定期の給付を目的とする贈与
毎年100万円ずつ20年間贈与する。毎年の受贈額ではな<、定期金に関する権利に対して贈与税が課される。
贈与者、受贈者のいずれかが死亡すると効力を失う
(2)負担付贈与
受贈者に一定の債務を負わせる贈与で、1,000万円の土地を贈与する代わりに借入金600万円を負担させる。
負担付贈与契約の贈与者は、負担の限度において、売買契約の売主と同様の担保責任を負う。
受贈者が債務を履行しない場合、贈与者は負担付贈与契約を解除することができる。
贈与財産の価額(贈与財産の価額は、原則として相続税評価額であるが、上場株式や土地建物の場合は、取得価額や相続税評価額ではなくて通常の取引価額となる。)から負担額を控除した価額に対して贈与税が課される。
(3)死因贈与:贈与者の死亡により効力を発生する。
例えば、私か死んだらこの土地を贈与する。
相続税の課税対象とされ、贈与税は課されない。
※「相続税の生前対策」としての贈与の実際の活用方法は、詳しくはこのサイトの別稿参照。
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