『相続の実際の流れ』を実務と関連付けながら見てみましょう。

1.被相続人の死亡で相続が発生

(1)まず遺言書があるか確認します。

   遺言書がある場合は、その遺言書が優先しますので、勝手に財産を取得したり処分することはできません。

(2)遺留分減殺請求のなされることがありそうか

 全財産を遺贈する遺言などの場合は、相続人の遺留分を侵害している場合がありますので、相続が開始おび遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ってから1年以内に遺留分減殺請求をしなければなりません。

 なお2018年相続法改正で、遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求と変更になっています。 

遺留分侵害額の請求
第一〇四六条 
① 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。(以下略)

(3)遺言書で遺言執行者を指定されている

 指定している場合は遺言執行者に、就任するかどうかを本人に確認します。

(4)自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合で、家庭裁判所へ検認手続をする

遺言書を見つけたらすみやかに、検認しましょう。封印がある場合は、勝手に開封せずにそのままの状態で家庭裁判所に持参し、検認手続をします。
(手続先は相続開始地の家庭裁判所)

2.遺言書がない場合は複数の共同相続人がいる可能性があるので相続人と遺産の調査・確定作業にはいる

(1)相続人を明らかにする書面として被相続人や相続人などの戸籍謄本、除籍謄本、改製戸籍などを取寄せ、相続人を確認しておきます。
(預貯金や不動産の名義変更等の添付書類としても必要)

(2)遺産の範囲を確定する。遺産をリストアップして書面にまとめます。

(3)遺産に資産以上の借金があるか確認する

 相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続人の戸籍謄本等必要書類を用意して家庭裁判所に相続放棄の手続をしなければなりません。(期間に間に合いそうもない場合は、期間の延長の手続も可能です。手続先は相続開始地の家庭裁判所)

3.財産の分け方

複数の相続人がいる場合は、法律で定める法定相続分どおりに分配するか、法定相続分と異なる分け方をする場合、関係者全員の話し合いになります。

4. 遺産分割の話し合い(遺産分割協議)

(1)相続開始後であればいつでもできます。

(2)話し合いに期限の定めはありません。ただし、相続税の申告が必要な方は、相続開始後10ヶ月以内に申告することが必要なので、それまでに協議を終えておきましょう。

(3)関係者全員参加
ア.法定相続人  イ.包括受遺者  ウ.遺言で認知された子
(未成年者、胎児、行方不明者などがいる場合は、特別代理人の選任のため家庭裁判所の手続が必要な場合もあります。)
なお、相続放棄した人や相続欠格や相続廃除に該当する人は、参加できません。

5.遺産全部をリストアップ

それぞれの遺産の評価額を可能な限りつけることです。

また、寄与分・特別受益も考慮できます

6.遺産分割協議書作成

遺産分割がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名して実印を押印し、印鑑証明書を添付し各自文書を所持します。

7.各種相続手続…不動産名義変更、預貯金名義変更あるいは解約手続、相続税申告など

以上が相続の流れと実務対応ですが、これを知識の不十分な相続人のみでやるのは非常に大変です。

専門家が必要になるわけです。

投稿者プロフィール

NKoshin
NKoshin

相続おもいやり相談室の最新情報をお届けします