1.遺言書の検認についての民法相続法の規定

第一〇〇四条(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

第一〇〇五条(過料)
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

第一〇〇六条(遺言執行者の指定)
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

……

これは、遺言コンプライアンスの規定と言っていいだろう。十分に倫理的である。自筆証書遺言のフラジャイルに基づく規定である。

遺言書は書いただけでは、「画餅」に過ぎないからである。執行手当てがあって初めて本来の願いが叶うのである。

この民法の規定を見ればわかる通りであるが、検認が遺言書を有効にする停止条件若しくは解除条件とはどこにも書いてないのである。つまり、この手続きは1004条第3項を見ればわかるように相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせ,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の自然状態を明確にして遺言書の偽造・変造を防止する目的にて法が定めたのである。遺言の有効・無効は沈黙しているのである。なお、相続人全員がそろわなくても検認手続は行われる。参加は任意である。

2.改正相続法の下では、申立も迅速に

繰り返し、相続おもいやり相談室の代表である当職の経験からこのサイトで繰り返し申し上げているように、民法177条などの適用が相続については法定相続分を超える分についてはそのまま適用されるのである。検認後には、家裁が「検認済証明書」を付けてくれるのでこれが実務では価値があるのである。

迅速に権利保護をするしか、また相続人では葬儀などで時間が取れないので、第三者の遺言執行者がベターであろう。問題は、そのような専門家が極端に少ないことである。自称相続専門家だらけのネット常態であるが如何せんや。

遺言書の保管している遺言執行者が迅速に申立人として、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所への道を進めるかどうかである。もちろん、遺言書を発見した相続人も可能であるが、一体どれだけもめてきたのかご承知の通りである。京都人は東山のかばん屋さん事件は忘れないよ。

3.申し立て時の添付書類

これも相続人であれば、自分で収集することは大変時間がかかるが、相続おもいやり相談室の当職のように全国から迅速に収集可能な「職務請求用紙」を持っているものが最適であろう。

通常は、遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本、 相続人全員の戸籍謄本、遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本 である。

また、【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】は、遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本、【相続人が不存在の場合,遺言者の配偶者のみの場合,又は遺言者の(配偶者と)の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合】は、 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本、 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本、 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本、 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本 である。

かなり膨大なものが必要になる。これをどれだけ迅速にやれるかにかかっているである。

4.法務局における遺言書の保管等に関する法律…適用除外

令和二・七・一〇に施行された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」では、検認は不要である。保管時に形式面などのチェックが行われるからである。相続おもいやり相談室でも何回もしているが、通常は法務省の職員がかなり慎重にチェックする。ほぼ半日かかる。

(遺言書の検認の適用除外)
第一一条 
民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

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